RCD-M41 開発者×サウンドマネージャー インタビュー
ワンボディでHi-Fiグレードの高音質を実現したコンポーネントMシリーズのニューモデルRCD-M41が登場しました。その設計コンセプトや魅力について、開発者とサウンドマネージャーにインタビューしました。
ワンボディでHi-Fiグレードの高音質を実現したコンポーネントMシリーズのニューモデルRCD-M41が登場しました。
その設計コンセプトや魅力について、開発者とサウンドマネージャーにインタビューしました。
CDレシーバー
RCD-M41
42,800 円(税抜)
スピーカーシステム
SC-M41
17,800 円(税抜)
製品の詳細はこちらをご覧ください。
GPDエンジニアリング 出口昌利
RCD-M41は20年続いている名門シリーズの11世代目
●設計の出口さんには、DCD-1600NEの開発者インタビューや「Advanced AL32 Processing Plusとは何か」でも最近ご登場いただきました。
今回はサウンドマネージャーの山内さんもお迎えして、RCD-M41の開発のお話をうかがいます。
よろしくお願いします。
開発者インタビュー 「Advanced AL32 Processing Plusとは何か」
出口、山内:よろしくお願いします。
●まずRCD-M41の概容について教えてください。
出口:RCD-M41はミニシステムの最新モデル「Mシリーズ」の最新モデルです。
Mシリーズは 1997年にデビューし、今年でなんと20年目を迎えるという息の長いモデルで、ミニコンポサイズでありながら音質が高いモデルとして定番となっており、海外を中心に高い評価を得ています。
M41はMシリーズの11世代目となります。
●20年も続くシリーズの11代目とは凄いですね。
山内:このサイズのコンポとしては定番中の定番と言えるのではないでしょうか。
しかも2008年に出たRCD-M37というモデルから、10年連続してイギリスで高い権威があるオーディオ誌「WHAT HI-FI?」のアワードを獲り続けています。
先代のモデルRCD-M40はWhat Hi Fiでプロダクト・オブイヤーを受賞しました。
今回のRCD-M41でも、先代のM40を凌駕するクオリティを実現して賞を獲りたいと思っています。
The DM40 Does it again at the What Hi Fi Awards
サウンドネージャー山内
●RCD-M41の機能について教えてください。
出口:ミニサイズのコンパクトなボディにCDプレイヤーとパワーアンプを内蔵しています。
さらにラジオも搭載していますが、このあたりはイギリスをはじめ海外ではラジオのユーザーが多いということが背景にあります。
また今回から初めてBluetoothを搭載しました。
●CD、ラジオ、さらにBluetoothでスマホやタブレットの音源などが聴けるわけですね。
出口:それだけではありません。
リアパネルにはデジタル入力とアナログ入力があります。
デジタル入力は192/24bitのハイレゾ音源まで対応できますのでDNP-730REのようなネットワークプレイヤーを接続してハイレゾ音源を再生させることができます。
またテレビの音声をデジタル入力すればテレビのスピーカーとは比べものにならない高音質でテレビの音楽番組などが楽しめます。
大幅な構造改革を行ってHi-Fiグレードにまで音質を高める
●RCD-M41はどんなコンセプトで開発されたのでしょうか。
出口:2年ぶりのモデルチェンジとなりました。
先代のM40が非常に高い評価を得たこともあって、全モデルを凌駕するためには大幅な構造改革が必要である、という結論に達しました。
そこでアンプを中心に今回は大がかりな変更を行い、デノンのHi-Fiの新しい流れである2500NEシリーズや1600NEシリーズに連なるレベルと言えるHi-Fiクオリティを目指しました。
●具体的にはM-40からどんな変更を行ったのですか。
出口:まず一番大きいのはパワーアンプでした。
RCD-M40までは1チップでステレオ音源が増幅できるパワーアンプのモジュールを使っていましたが、今回はフルディスクリート構成としました。
イメージでいうとAVアンプから2チャンネル分を抜き出してきて、そこにHi-Fiの技術を投入しながらRCD-M41用にカスタマイズした、という感じです。
●アンプのクオリティはワンチップよりディスクリートのほうがいいのですか。
山内:ワンチップが良くないという意味ではありません。
ただHi-Fiアンプのようにフルディスクリートであればチューニング次第で音を追い込んでいけるのです。
逆に言えばそこまでやらないと、すでに高い評価を得ているM40を超えることは難しかった、とも言えます。
出口:ご覧ください、これがディスクリートのアンプ部分です。
緑色のコンデンサーはHi-Fiオーディオでも使われているデノンのカスタムコンデンサーです。
↑ディスクリート化されたアンプ部分。
Hi-Fiオーディオで採用されているデノンオリジナルのコンデンサーを使用
●確かにAVアンプのアンプ部分を抜き出してきたような感じです。
出口:はい。これで30W(6Ω)出ます。
実際にはもっと余裕がありますので、このサイズですがエネルギー感は非常に高いです。
剛性を高めるための様々な工夫とサウンドパーツの多用
●アンプ部分の他にはどんな点が変わったのでしょうか。
出口:本体のシャーシなどの剛性を高めました。
今までシャーシの厚さは0.8mmでしたが、これを1mm厚にしました。
さらにシャーシの底面では絞りを入れることで剛性を高めています。
剛性アップは音質向上の基本ですが、とはいえコストに響くので難しい面はあります。
今回はコストが厳しい製品でしたので結構苦労して実現しました。
↑剛性を高めるために底面に絞りが入っている
●シャーシの鋼板の0.2mmの厚みの違いは、そんなに効いてくるのでしょうか。
山内:見た目ではわかりにくいですが、手で押してみると剛性はかなり違います。
防振性が高まってリジットになるので、音には効いてきます。
出口:剛性という点では、シャーシやパーツの取り付け方法やネジも変更になりました。
たとえばパワーアンプの取り付けのネジですが、今まで3点止めだったのが4点止めになっています。
これらのネジは長さや色までこだわっています。
●ネジの色ですか?
山内:実はネジにも固有な音があるのです。
材質に関連するところやフィニッシュや長さによっても音の微妙な傾向は変わります。
数年前までHi-Fiモデル以外ではさほどネジに注目していませんでしたが、やってみると変わりますし、逆に言えば、ネジで音が変わるところまでサウンドクオリティが高くなった、とも言えます。
↑RCD-M41のパワーアンプ部を固定しているネジ
●ネジで音が変わるというは、凄いですね。
山内:音質を微調整したい時には有効な方法のひとつです。
たとえば回路の中で抵抗値を微調整しながら音質をチューンするようなイメージですね。
コンデンサーなどに比べると音質変化は地味ですが、細部も重要で試せることはおおよそ何でも行っています。
●シャーシはかなりベンチレーションの穴が空いています。
出口:サイズがコンパクトであるにもかかわらず出力があるので、高出力時の発熱はどうしても避けられません。
そこで今回放熱に関してはシャーシのベンチレーション(通気)の穴の形状を工夫しました。
シャーシにはできるだけ穴を開けて通気性を高めていますが、穴の種類が一種類だけではなく、長い穴と短い穴を組み合わせています。
これは同じサイズの穴だと同じ共振モーメントを持ってしまうので、それを分散させるための手法です。
↑シャーシには通気性を高めるために長さが異なる穴が組み合わせている
出口:もう一つ変わった部分があって、それはRCD-M40ではさほど使われていなかった「サウンドパーツ」がRCD-M41ではふんだんに使われました。
●サウンドパーツとはなんでしょうか。
山内:音に関わるパーツのことです。
たとえば抵抗やコンデンサーなどですが、これらもHi-Fiのモデルで使用されているようなデノンカスタムのコンデンサーをはじめ、このモデルのためにいくつも新しいパーツを投入しています。
とにかく高水準の狙った音質を獲得するためには様々なオプションが従来以上に必要だったためです。
それも今回RCD-M41がHi-Fi同様の音作りをした結果です。
↑RCD-M41の内部基板。サウンドパーツが多用された
ミニとは思えないサウンドステージを実現したRCD-M41
●アンプ部をフルディスクリート化するといった大きなところから、ネジ一本に至るレベルまで徹底的に磨き上げられたことが良くわかりました。
そうした改良点によってRCD-M41はどんな音質を実現したのでしょうか。
山内:音質が高評価だった RCD-M40も音場感は豊かでしたが、さらに進化しサウンドステージの明瞭さが実現できたと思います。
そこのところは新しいデノンのサウンドとして追求してきた「ヴィヴィッド」「スペーシャス」が具現化されているといってよいかと思います。
●音質的にHi-Fiグレードに近づいたということでしょうか。
出口:そうですね。
正直言って今までのミニとは思えない音のステージで、音のグレードは非常に高いと思います。
細かい音の定位や音のクオリティ、そして微細な音の表現などを追い込んでいく時点ではもうHi-Fiの価値観で論議しました。
RCD-M41にはBluetoothをオフにするモードも搭載していますが、BluetoothのON/OFFで音が変わるというレベルまで音質は高められています。
↑SC-M41
●専用のスピーカー「SC-M41」も進化したのでしょうか。
出口:今回はアンプの新開発による音質向上が大きなテーマで、スピーカーについては基本設計は前モデルを踏襲しましたが、トータルシステムの製品ですので進化したアンプとのマッチングをはかるため、かなり追い込んだチューニングがされて細部は見直しております。
RCD-M41には「SC-M41」に特化したスピーカーオプティマイザーも搭載しています。
これをONにすると出音がすっきりする効果があります。
このあたりはお好みでお使いください。
また付属のスピーカーケーブルもグレードアップしました。
スピーカーケーブルの芯線の太さは「AWG」という単位を使いますが、従来 18番線だったのが今回は16番線と、2グレード芯線が太くなりました。
断面積で言うと58%アップしています。
断面積の拡大は低域のパワー感にダイレクトに出ますので、前に比べてかなり低音が出せます。
↑付属のスピーカーケーブル。芯線が断面積で58%アップ
出口:またケーブルの接続に関してはRCD-M41のリアパネルのスピーカー端子が横一線の配置になりました。
今までは縦に2列だったんですが、これだと下にあるターミナルにスピーカーケーブルが差しにくいですよね。
それで今回、ユーザビリティの向上を目指してこの配置となりました。
高い完成度を誇る先代の「RCD-M40」を超えるのが最大の難関だった
●先ほど実際に音も聴かせてもらいましたが、とてもこのサイズのシステムが出しているとは思えないHi-Fiレベルの音でビックリしました。
RCD-M41の開発の過程で一番大変だったのはどんなところでしたでしょうか。
出口:やはりアンプですね。
今回はディスクリート化して新規開発となったので時間もないなか相当苦労しました。
トータルで言えば「先代のRCD-M40を凌駕する」のが一番大変でした。
RCD-M40はすでに評価も高く、設計としても熟成されていました。
開発当初は「変えなくていい」とまで言われたぐらいです。
ですから、ここまで納得レベルに仕上げるのはなかなかしんどかったです。
●Hi-Fiのようにスペースに余裕があるわけではないですよね。
山内:もちろんそうサイズの問題もありました。
これだけ高い性能を狙いながら、容積は小さく抑えなくてはならない。
Hi-Fi製品ならあまり苦労しないようなことでも、RCD-M41のサイズで実現するためには針の穴を通すような苦労がありました。
非常に制約が多い開発でした。
●最後に一言、RCD-M41をどのように楽しんでいただきたいですか。
出口:最近の調査で、大学生以下の若い方の場合、コンポを持っていない方が非常に多いと聞きました。
極端に言えば音楽は携帯のスピーカーだけで充分、という方も多いそうです。
でも音楽はスピーカーで聴かなければ、本当の魅力は味わえません。
RCD-M41はお求めやすい価格ですし、サイズもコンパクトで置く場所を選びません。
しかも今回からはBluetoothを搭載しましたから、スマホやタブレットに入っている音楽も楽しめます。
またアナログ入力は、そのままアンプに直結していてコンパクトながら性能が高いアンプとしてお使いいただけます。
デジタル入力は192kHz/24bitにまで対応していますので、今話題のハイレゾ音源も楽しめます。
ビギナーからマニアまでいろんな方に使っていただけるミニだと思いますので、ぜひ一度店頭で音を聴いていただければと思います。
(Denon Official Blog 編集部 I)