発売にあたって
トーンアームとカートリッジは本来一つの振動系として考えなければなりません。
DA-1000は、最高級MCカートリッジDL-1000Aなどの超軽針圧、ハイコンプライアンス・カートリッジの卓越した性能を十分に発揮させることを目的とした、軽量ストレート・ロングタイプ・トーンアームです。新材料の磁性流体を採用した全く新しい方式のメカニカル・ダイナミックダンピングシステムを採用し、伝域共振を理想的にダンピングしています。したがって従来より問題であった混変調ひずみを低減し、トレース能力の向上に大きな効果を発揮します。またアームパイプ鳴き、シェル鳴き防止の為特殊セラミックを溶射し剛性を高めています。
さらに音質面での十分な試聴テストをくり返し、"最高級トーンアーム"の名にふさわしいものに仕上げました。
DA-1000の主な特長
1. 新方式メカニカルダイナミックダンピング機構（特許実用新案8件申請中）
トーンアームの支点部に、ワンポイントサポート方式のスタビライザーを設け、ピックアッブの低域共振周波数における共振峰に対して逆の特性を示し、さらに新材料の磁性流体によってダンピングを行なうメカニカルダンピング方式を採用しています。その為伝域共振を効果的に制動して安定したトレース能力を発揮できると共に、針とびや混変調歪の発生を抑えて、カートリッジの性能をフルに生かした再生音質が得られます。
※メカニカル・ダイナミックダンピングの原理は、いわゆる吸振装置の原理を利用したもので、第3図のようにmt1に外力が加わると、ある周波数で共振をおこし変位しますが、Ctを介してmt2をある周波数に同期させることによりmt1の変位はOに保たれます。これは逆共振の状態にあります。吸振作用にともなってできるピークディップは、カップに入った磁性流体による粘性抵抗によってダンピングすることができます。アームの軸受感度には何らの影響も与えません。等価質量（mt2）はスタビライザーで、等価コンプライアンス（Ct）はマグネットにより共振周波数を可変できます。
2. ヘッドシェル、アームパイプにセラミック複合材料使用
トーンアームのシェル鳴きやアームパイプの共振により発生し、再生音質を損う分割共振を防止するため、ヘッドシェルおよびアームパイプに特殊セラミック熔射を施して高剛性化をはかると共に、複合材料によるダンピング効果も得られ、色づけのない透明な再生音質が得られます。
3. 重量級アームベース採用−「アームは軽くベースは重く」
アームスタンド部を重量化して、プレーヤー本体から伝わる振動を防止し、安定した忠実度の高い再生を可能にしています。（第1図）
4. DENON独自のマグネチック形アンチスケーティング機構
磁性体を使用した無接触方式のアンチスケーティング機構は、アームの感度に影響を与えず、また、レコードの内外周によって変化するインサイドフォースに対し、つねに正確なキャンセル量が得られます。なお、ゼロバランス調整などの際はワンタッチでアンチスケーティング機構を解除することができます。
5. ローノイズ・低抵抗・低容量出力コード
接続コードにはローノイズ・伝抵抗・低容量出力コードを採用しています。また、接続部は外部からの誘導雑音を防ぐために高級メタルコネクターを採用しています。
なお、DENON高性能トランスAU-1000に接続する場合には、ネジ付高級ピンブラグによりさらに完全な接続ができます。
6. 可動部分の軽量化と高精度軸受部
ハイコンプライアンス・カートリッジの性能を最大限発揮させるため、軽量ストレートアームにして実効質量を低減し、軸受部には高精度、高級ベアリングを用いて高感度にしていますので、レコードのそりや大振幅の音溝に対しても、常に安定したトレース性能を発揮します。
仕様
- 形式：スタティックバランス形ダイナミックダンピングトーンアーム
- ダンピング方式：メカニカルダイナミックダンピング
- 全長：370mm
- 有効長：282mm
- オーバーハング：12.5mm
- オフセット角：18°
- トラッキングエラー：最大1.8°
- 針圧調整方式：ダイアル目盛方式 1回転1.5g（0.1g目盛付）
- 適合カートリッジ自重範囲：5〜8g、7〜10g（サブウエイト使用時）
- 高さ調整範囲：42〜70mm（アームボード面からアームパイプ中心まで）
- ヘッドシェル：アルミダイカストに特殊セラミック熔射（軽量高剛性専用シェル）
- 出カコード：高級ピンプラグコネクター付ローノイズ低容量コード（接続部金メッキ仕上）
- アンチスケーティング方式：マグネチックコントロール方式
- アームリフター：オイルダンプ方式
- 軸受部：高精度ピボットベアリングおよびミニチュアベアリング採用
- ヘッドコネクター：プラグイン方式ネジ固定（締付）4Pコネクター（接続部は金メッキ仕上）
- 別売専用ヘッドシェル：サービスパーツ扱
（昭和58年）
