DH-510は、放送機・業務用機器の技術を駆使して設計されたDH-710F/610Sの性能を受けついだ、2トラ38高性能オープンテープデッキです。
テープ走行の基本となるメカニズムに、鋳物をベースとして、ダイレクト・ドライブ1キャプスタン方式、テープに理想的な条件を与える新開発ダイレクトテンションサーボの採用により、正確で安定したテープ走行を図り、しかも、テープの安全性にも十分考慮しています。
より高い性能を追求したDH-510は、変調雑音や、ウウ・フラッターの低減と高S/N比、低ひずみ率を実現し、忠実度の高い音質を得ています。
特に19cm/sの性能を38cm/sに匹敵する高い性能を得ています。
【主な特長】
■滑らかで安定したテープ走行を実現する高精度メカニズム
1)ダイレクト・ドライブキャプスタン駆動方式で安定したテープ走行
キャプスタン駆動は、スピード検出に磁気記録検出方式(DH-710F/610Sと同じ方式)を 採用したサーボ方式による、ダイレクトドライブ方式を採用しましたので、回転ムラや振動が 少なく、ワウ・フラッター(38cm/s時0.025%wrms以下)変調雑音などの特性が非常に良くなっています。
2)新開発ダイレクト・テンションサーボの採用
テープ走行を安定させ、ヘッドタッチをベストにするため、バックテンションが必要となりますが、DH-510では、ブレーキの力でテープテンションを発生させ、テンションアームでブレーキカを直接制御するダイレクトテンションサーボ方式を採用しました。このため、録音・再生時における供給側テープの巻径によるテープテンションの変化がないので、テープスピードの変動や、ワウ・フラッター及び変調雑音の増加がありません。早送り、巻戻し時も、テープ張力はつねに一定に保たれ、程よい硬さでリールに巻かれます。(録音、再生、巻取り時の供給側モーターの電流は不要になります。)
ダイレクトテンションサーボの動作
ダイレクトテンションサーボの構造は、ブレーキバンドをブレーキドラムに450°(1回転と90°)巻かれています。一方はバックスプリングに接ながり、もう一方はサーボアームに接ながっています。
大形リールの場合は実線の位置でサーボします。小形リールの場合は、ブレーキトルクを小さくするようにサーボがかかるため、バックスプリングが引っばられ、点線の位置でサーボします。
また、供給リール側の繰り出し半径が小さくなったり、テープテンションが強くなったとすると、ガイドローラーが右側に動いてブレーキトルクを弱める方向に働らき、一定のテープテンションを与えます。
このようにリールサイズが変っても、テープの繰り出し半径が変化しても常にスムースにバックテンションを安定に保ちます。
3)テープをいためない合理的な走行系
左右のテンションアーム問のテープ走行は、なるべく、直線に近くなるように設計されています。
また、テープの接触する個所は、ヘッド以外すべて特殊ガイドローラーにするとともに、過渡なテンションに対してダンパー材を使用して防いでいます。
これにより、テープの装着は、ダイレクトテンションサーボとあいまって、大変容易になり、また、テープのいたみは大変少なくなっています。
テープ走行部
4)硬質パーマロイヘッドの採用
高域特性の良いナローギャップの硬質パーマロイヘッドを採用しました。形状効果による低域のあばれを少なくするよう特殊形状に仕上げられていますので、優れた録音、再生特性が得られます。
5)テープ保護を考慮したICロジックコントロールとフェザータッチ操作ボタン
再生、録音、早送り、巻戻しの制御をIC化して信頼性を向上させています。早送り、巻戻しから再生ボタンを押すと、テープは自動的に停止した後、再生動作になります。
6)PAUSE/MUTEボタンの採用
ミュート録音(無信号録音)と、ポーズ(走行一時停止)の2つの操作がワンタッチでできます。
録音中PAUSE/MUTEボタンを押している間は、無信号録音でテープは走行し、ボタンを離せばテープは一時停止しますので、不用な音のカットや曲間スペースなどの編集に便利です。
再生中は、ポーズ動作だけになります。
7)メカニズムのベースに総鋳物フレームを採用
総鋳物フレームは、高い精度で加工され、しかも入念に調整されて組立てられた各部の性能は、長期間にわたって維持されます。
■高精度メカニズムを活かす高性能録音・再生アンプ
1)ダイナミックレンジが広くひずみの少ない録音・再生アンプ
P-P回路を使用した録音アンプは、最大出力レベルを高級業務用機と同じく、規準レベルに対して30dB(1kHz)以上の余裕をとりましたので、録音アンプの飽和によるひずみが録音されることはほとんどありません。
録音・再生の総合ひずみ率は、高性能ハードパーマロイヘッドとあいまって、規準レベルに対して、第3調波ひずみ0.1%以下(3M♯250)という優れた特性を得ています。
2)最適なバイアス量と録音イコライザー特性を設定できます。
バイアス量と録音イコライザー特性の連続可変調整方式を採用しています。
テープ別調整表により、前面のBIAS及びEQツマミで最適なバイアス量とイコライザー特性を設定できますので、リニアリティと、周波数特性を最良の状態に設定できます。(バイアス調整範囲±40%)
また、高いバイアス周波数(約180kHz)を採用していますので、S/N比の良い録音を可能にするとともに、FMエアーチェックの際のビートを起こしにくくなっています。
3)マイクアッテネーターの採用
12dB減衰するアッテネーター・スイッチを設けましたので、マイク感度や使用状態に合わせて切換えることができ、S/N比が良く、ダイナミックレンジの広い録音が可能になります。
4)ピーク・VU指示切換式のレベルメーター採用
レベルメーターは切換スイッチにより、ピーク指示とVU指示に切換えられますので、最適録音レベルの設定が非常に容易になります。(VU最大指示十3dB ピーク最大指示+13dB)
5)規準再生レベル
PLAY BACKボリュームを最大(右廻し)にした時、録音レベルや、再生レベルをチェックすることができます。(0VU指示→0.775V出力。規準レベル200pwb/mm 1kHz)
■そのほかの特長
1)タイマーによる録音・再生機能を内蔵
オーディオタイマーと組合わせて、任意の時間に録音、再生のスタートができます。
録音の場合、TIMERスタートスイッチ(メカニズムパネル左側)と、REC−MODE(アンプパネル右側)を押し、再生の場合、TIMERスタートスイッチのみを押すと、タイマーにより電源が入り、録音又は再生のスタートができます。(スタートまでの所要時間約6秒)
2)マイク入力とライン入力とのミキシングが可能
3)テンションアームに無接触セフティスイッチを連動
テープ走行が終った時、右側テンションアームに連動したスイッチ(LEDとの組合わせによる無接触構造)により、テープ走行動作は自動的に停止いたします。
4)フリクションボリュームでLRのバランスを調整できます
PLAYBACK、LINE、MICの各ボリュームは、2連フリクンョン形を使っていますのでL、Rのレベル差を調整する場合こ便利です。
5)ハイインピーダンスのヘッドホンも使えます
8Ω等の低いインピーダンスのヘッドホンのほか、200Ω等の高いインピーダンスのヘッドホンも使用できます。
- 形式
- 3モーター・2スピート=ステレオオープンテープデッキ
- 使用モーター
- キャプスタン用:6極アウトローター形ACサーボモーター1個
- リール用:6極エディカレントモーター2個
- 駆動方式
- キャプスタン部:ACサーボによるダイレクトドライブ
- リール部:ダイレクトパックテンションサーボ
- トラック形式とヘッド
- 2トラック・2チャンネル
- 録音ヘッド(ハードパーマロイ)
- 再生ヘッド(ハードパーマロイ)
- 消去ヘッド(フェライト)
- 使用リール径
- 使用半導体
- テープスピード
- テープスピード偏差
- 早巻き時間
- ワウ・フワッター
- 38cm/s 0.025%wrms以下
- 19cm/s 0.03%wrms以下
- 総合周波数特性
- 38cm/s 30〜30kHz±2dB
- 19cm/s 20〜25kHz±3dB
- 録音・再生補価特性
- 録音バイアス
- 約180kHz(バイアス量+40%〜-40%調整可能)
- チャンネルセパレーション
- 入力
- ライン -22dB(VR最大時)100kΩ不平衡
- マイク -72dB(ATT・0dB)-60dB(ATT・12dB)50kΩ不平衡
- 出力
- ライン 規準出力レベル0dBm(0VU 0.755V)出力インピーダンス100Ω以下 不平衡 適合負荷インピーダンス600Ω以上
- ヘッドホン 適合負荷インピーダンス8Ω以上
- 第3高調波歪率
- 1kHz規準レベルにおいて0.1%以下(スコッチ250使用)
- 総合S/N比
- 最大録音レベル(514pwb/mm)に対して66dB以上(聴感補正SISA)
- 規準録音レベル(200pwb/mm)に対して58dB以上(聴感補正SISA)
- リモートコントロ−ル可能
- 附属品
- 10号リール×1/10号リールクランパー×2/7号リールクランパー×2/リール高さ調整シート×2/ヘッドクリーニング・セット×1/PINコード×2/ソケットレンチM3用×1
- 電源
- 消費電力
- 外形寸法・重量
- 455(W)×475(H)×210(D)(mm)22kg