最近国内各社から相次いでダイレクトドライブターンテーブルが発売されターンテーブルの高性能化はベルト・アイドラ方式からダイレクト方式に移り変わろうとしています。当社に於てもダイレクトドライブターンテープルは放送局用として昭和45年3月に発売して以来、現在各放送局で使用され好評を得ております。
今回発売するDP-5000は、世界を代表するターンテープルとして極点に達した方式て、これは既に放送用として活躍しているDN-302F形サーボターンテープルを市販用にアレンジしたものでその構成及び性能(立上り時間を除く)は302F形と同様になっています。
放送用サーポターンテーブルでは、起動時の所要時間が極めて短く、33 1/3rpmで約0.2秒ですが一般家庭用としては、特に起動時間が要求されることが少ないので本機では約1秒(回転角度で120度腰)となっています。
従って、本機は全く放送局用のDN-302F形と同じ構成のまま、モータとその駆動電源の容量を小形化したもので、立上り時間を除けば局用としても十分使用できる高作能パーフェクト・サーボターンテーブルです。
【DP-5000の特長】
本機は、ベルトやアイドラーを除くために、また、プレー、ストップおよびスピード切り替えを、すべて電気的に制御するために、モータ直結のセンタドライブとし、ターンテーブルの回転速度を検出し、モータの回転数を制御するというサーボ回路を付加して安定な動作が得られるようにした画期的な方式です。
DP-5000形の特長は、ユニークなデザインと格調高い仕上げ、特に人間工学的な操作性を重視した機構をもち、さらに、磁気記録を応用した非常に精度が高く応答の早いスピード検出器と、回転数の変化や負荷の変動に対しても回転磁界が滑らかで振動の少ないソリッドロータ形交流2相サーボモータを低電圧で使用している点で、これは今までのターンテーブルの概念とは異なった軽量のターンテーブルにもかかわらずワウ、フラッタ、ランプル等の性能が一般の測定器では測定出来ない位の値になっています。
ターンテーブルの軽量化は軸受の摩耗を防ぐと同時にターンテーブルの立上り時間の短縮にもなり長期間にわたって安定した性能を維持する事が出来る理想的なターンテーブルと言えます。
以上の様な本機の特長以外にダイレクトドライブターンテーブルとして種々の利点を有しているので、従来のアイドラ形やベルト形に見られたゴムの変形や磨耗による回転ムラやモータの高速回転による機械的振動、モータのアンバランスな回転磁界による電気的振動及び電源の周波数と電圧の変動によるスピードの変動が一掃されています。
図2は本機のサーボ系のブロックダイアグラムであり、図1において(1)はスピード検出用磁気ヘッド、(2)はリムの内側に磁気コーティングを施し、一定波長の信号を記録したターンテープル、(3)は2相トルクモータです。
図2によって動作説明をすると次のとおりです。
まず、検出ヘッドでターンテーブルのスピードをパルスとして検出し、そのパルスを増幅してリミッタ回路を通し、FM復調回路によってスピードの変化を電圧の変化に変換する。この電圧と、あらかじめ規定スピードになるようにセットされた基準電圧と比較し、その差の電圧でモータの駆動電源電圧をコントロールしてサーボを行なっています。したがってスピード切り替えは、基準電圧を切り替えることによって簡単に行なうことができます。
【ターンテーブルの駆動方式】
1.モータ
直結射動のターンテーブルの駆動方式としては、
(1)多極同期モータによる方式
(2)直流モータによるサーポ方式
(3)交流モータによる周波数制御方式
(4)交流モータによる電圧サーポ方式
の4とおりの方法が考えられます、以下これらの方式の得失について述べ今回発売した方式にいたる経過を説明して、さらに各部について述べてみたいと思います。
1.1.多極同期モータを使用する方式
この方式は、N=120f/P(rpm) ここに N:回転数 P:極数 f:駆動周波数で表わされます、Nの値が33 1/3、45rpmになるようにPを選ぶ方式ですが、f=50Hzの場合、45rpmを得ることができないため、60Hzの電源のときにのみ可能になります。上の式で、f=60Hzに対するPの値を求めると、N=33 1/3のとき、P=216、N=45のとき、P=160となり、このようなモータは、回転数に応じてそれぞれ異なる固定子を用いなければならないので非常に複雑な構造になり製作も容易ではありません。
1.2.直流モータによるサーボ方式
ターンテーブルのスピードを検出し、規定回転数になるように直流モータに供給する電圧を制御する方式であります。しかし、ここに使用する直流モータの駆動は、スイッチング駆動であるため、トルクむらか生じやすく、トルクむらは直結駆動においては、直接回転むらの原因になるので、これを極力小さくしなければなりません。
その対策として、モータの1回転中のスイッチング回数を増すことと、ターンテーブルの慣性モーメントを大きくしてトルクむらによる回転むらを少なくする方法があります。前者の方法は、モータのスロット数、コイル数を多くすることになり、モータの製作上限度があり、後者の方法では、ターンテーブルの起動時問が長くなるので、最適な行法とはいかないようです。
1.3.交流モータによる周波数制御方式
この方式には同期モータを使用する方法と、インダクションモータを使用する方法がありますが、 同期モータを使用する方法は、発振器により規定回転数の電源を使用する方式で、この方式もハンチング現象を伴うので使用できません。
インダクションモータを使用する方法は、ターンテープルのスピードを検出して規定回転数になるようにモータの電源周波数を制御する方式であるが、この方式では、モータを常時最大トルクで回転させるため、モータの振動がターンテーブルのランプルになり、高性能なものにすることは困難です。
1.4.交流モータによる電圧サーボ方式
ターンテーブルの回転スピードを検出し、規定回転数になるようにモータの交流電源電圧を制御する方式で、この方式では回転磁界を円形にすることができるのでトルクむらの少ない回転が得られることと、サーボ回路との組み合わせによって軽量ターンテーブルでも負荷変動に対して安定であり、しかも起動時間の短いものの製作が可能となります。
フレーム裏面
【DP-5000の駆動モータ】
本機に使用したモータは、1極当たりのコイル数を多くし、スチータの磁界が正弦波状に分布するようにして、また2相電源で駆動することによって、トルクむらの低減を図り、同時にロータの2次抵抗を大きくして電圧サーボを可能にしたものです。
このモータの駆動方法は、モータ駆動用の2相電源を45°の進相回路と遅相回路で作り、おのおのの出力を電力増幅して供給しています。
2相電源で駆動する方式は、一般の単相電源で駆動する方式と異なりトルクムラ、振動の少ない点で優れております。
第3図は、普通のインダクションモータと、本機に使用しているモータのトルク特性ですが、インダクションモータはAのようにサーボモータとしては不適当です。Bは本機に使用されているモータのトルク特性ですが電圧サーポとしては理想のものです。
なお普通の単相電源でコンデンサ進相のモータでは、電源周波数の変動及び回転数の可変で主巻線及び補助巻線のアンペアターンがアンバランスになると同時に両者の電流位相差も最良状態でなくなるため回転磁界が滑らかでなくなりトルクむらが生ずる欠点があります。
【DP-5000のスピード検出】(特許実新2件申請中)
スピード検出は、サーボ機能を決定する重要なポイントであり、回転体のスピード検出方法としては、電圧検出と周波数検出の2過りの方法があります。
電圧検出は、発電機の原理で回転スピートに比例した電圧を検出するもので、その利点としては、直接スピードに比例した電圧を検出できるので、 サーボ回路が簡単になることです。しかし、温度の変化や時間の経過によって生ずる磁力の変化は、出力電圧に影響を及ぼす欠点をもっています。
一方、周波数を検出する方法には、磁性体で作られた歯車の凸凹を磁気ヘッドでパルスとして検出する方法や不透明な円盤に切られたスリットを光電検出器でパルスとして検出する方法があり、そしてこのパルスの周波数を電圧に変換する方法が一般に使用されています。
周波数検出の利点は、出力電圧の変動には無関係となり、混度変化や経年変化がなく、検出機構が簡単てす。
そのため検出周波数をあげることが、電圧検出に比して容易です。ただ周波数変化を電圧変化に変換する回路か必要ですが、ターンテーブルのように、回転スピードの低いものの検出には、歯車の歯数やスリットの数を多くしなければ応答の速いスピード検出ができません。
しかし、これを多くした場合、工作上ピッチ誤差が出やすく、また加工時の偏心などもあり.高精度のものを得ることは困難です。
ターンテーブル裏面
これに対し本機に採用した方法は応答速度が速く、精度も非常に高いもので、ターンテーブルのリムの内側に磁気コーティングを施し、特殊な方法で2000個のパルス信号を高い精度で記録し、これを磁気ヘッドで検出する方法です。本機に採用した記録方法によれば、記録波長の波長誤差を0.01%以下にすることが可能で、この数字はいままでの方式の中で最高となります。
なお、信号検出は、磁気ヘッドをコーディング面に接触することなく行なうので、機械的な損耗がなく長時間にわたって高い信頼度を維持できる点は他の方式では得られません。また、磁気コーティング材料には、保持力の大きいものを使用しているので、外部磁場に対する安定度はじゅうぶん高くなっています。
スピード検出用磁気ヘッド
磁気録音の拡大写真(マグナシー使用)
【DP-5000のサーボ原理】
本機のサーボ回路は、図2に示したとおりの構成になっていますが、負荷の変動に対する安定度を高めるにはこのサーボ回路のループゲインを上げればよいが、しかし、ループゲインを増加すると、ループ内に生ずる位相遅れによってこの系は不安定になるおそれがあります。
そこで本方式では、その位相遅れの原因となるスピード検出系の積分回路の時定数を小さくするために、スピード検出用のパルスの数、すなわち周波数をできるだけ高くして目的を達しています。
本機の場合は33 1/3rpm で約1.1kHzになります。
次にこのサーボ系の中にあって電気−機械変換系を受けもつモータの動作状態について簡単に述べて見ると、図4の等価回路で表わすことができます。図4においてIは定電流源、Lはターンテーブルとモータのロータの慣性モーメント の和、rはレコード演奏時の負荷と軸受けのフリクショ ン、Rはモータのステータとロータ間の結合の度合を示 し、また、iはターンテーブルのスピードを表わし、この等価回路においてiはrの変化によって変化すると同時に、Rを変えることによってもiを変えることができます。本機のように高速の回転磁界を超低速回転の出力とする場合、駆動電圧を変えることによって、等価回路の中のRを簡単に、しかも広範囲に変えることが可能であり、したがって、レコード演奏時にrが変動してターンテーブルのスピードiが変化した場合、このiの変化を検出し、iが常に一定になるように駆動電圧を変えてRを制御すればよいことになります。
サーボ基板
操作盤主要部
【DP-5000の性能】
高精度で応答の速いスピード検出系と、理論的にトルクむらの非常に少ない2相トルクモータの採用こより、本機の性能は次に示すようになっています。
- 回転むら:0.03%rms以下
- ランプル:−60dB以下
- 起動時開:回転角度約120°(33 1/3)
- 温度変化によるスピード偏差:0.05%以下20°±10°
なお、回転むらの測定には、慎重にカッティングされたラッカ盤を使用し、偏心の影響が最小になるように調整して測定しています。
現在LPレコードのカッティングマシン自体の回転むらが、0.02〜0.03rms程度あるのと、ラッカ盤をカッティングマシンからいったん取りはずして、他のターンテーブルにつけた場合、わずかではあるが精度が低下して測定されるのが普通であります。したがって、本機の回転むらはカッティングマシンの性能と同等か、あるいはそれ以下のものになっているといえます。
負荷特性については、一定の負荷に対するものの他にレコード演奏時に生ずる音楽の振幅の変化による負荷変動の影響も合わせての測定も、まったく安定に動作し変化は認められません。
これは回転むら測定用の信号と、1Hzから128Hzにわたって100%近く振幅変調した大振幅の信号をラッカ盤の同一面にカッティングし、これを2本のピックアップで再生して測定したものです。
ランプルの測定も慎重にカッティングされたラッカ盤の無音みぞを使いました。この測定結果もラッカ盤の無音みぞに含まれる信号に左右される程度になっています。本機のランプルの周波数分析したものは図5の過りです。
【その他の付属機構】
DP-5000のPOWER、33、45、STOPのスイッチは全て機械的ロック機構を有しないため、非常に操作が軽く長寿命です。又、33、45のボタンは自照式になっています。
NORMAL、VARIABLEのプッシュボタンはNORMALで、33 1/3、45rpmの規定スピードになりVARIABLEで約±6%のスピード調整ができ、音程に非常に敏感な人はレコードのカッティング時のスピード誤差の補正等が可能であり、又必要な時にはレコードの音程を半音約5.95%変える事も出来ます。絶対音感にうるさい人には大変便利なスイッチです。
【主要規格】
DP-5000
- モータ形式
- 駆動方式
- 速度制御
- 回転数
- 回転数切換
- 回転数調整範囲
- VARIABLE時±6%(但しNORMAL時は規定スピードのみ)
- 起動時間
- 回転ムラ
- S/N比
- 使用トランジスタ
- 使用ダイオード
- ターンテーブル径
- ターンテーブル重量
- 電源電圧
- 消費電力
DP-5500
- 本機はDP-5000に高級キャヒネットを組み合わせたものです。
- ダストカバー取りはずし可能
- ダストカバー指掛けつき
- ピックアップアームは14形アームまで取付け可能
- 電源はACコード プラグ式
- 防振ゴム足つき
- 寸法
- 価格