オーディオアンプはデータ的には限界ともいえるほどの高水準に達しておりますが、今日直面している諸問題の筆頭に、いかに音楽の再現性を良くするかという、最も基本的で重要な問題があげられます。
データさえ良ければ音楽の再現性に優れているかというと、決してそうであるとはいい切れないところにオーディオアンプの微妙さがあり、アンプ作りに於けるポリシーの差が大きく現われる要因でもあります。
特性と音とは無関係であるかのような極論も一部に聞かれますが、歪率の大きいアンプと小さいアンプに差がないわけはありません。
弊社では数値的に歪率だけを小さくするということばかりではなく、いかに音楽再生に悪影響を及ぼさないように設計し、その品質を均一に維持するかという点に多大の努力をはらっています。
この度弊社が発売するPMA-700は世界の名だたるオーディオアンプに十分匹適するものてあることは勿論、音楽の再現性をたえず意識しながら、プリメインアンプとしては最高のモデルとして設計されものであることを特に強調させていたたさます。
PMA-350ZもPMA-700と同様の設計ポリシーで企画発売するモデルであります。
【PMA‐700の設計思想】
PMA‐700はオーディオアンプはかくあるべきだという基本思想に基ずいて設計され、ディスクレコードの再生系は数々の特長を備えています。
■増幅器のレベル配分
PMA‐700の回路上の最大の特長は、電圧増幅はイコライザーアンプ部で、電力増幅は最終のパワーアンプだけで行われる設計になっていることです。
つまり、コントロール部分を全く使用しない時は信号はイコライザーアンプから直接パワーアンプに入り余分な回路を一切通らないわけで、歪やS/Nの悪化も一切なく最高の条件でプログラムを再生できます。この操作はディフィートスイッチで簡単にできます。
一般のプリメインアンプに於いては、イコライザーアンプの出力等の関係から、パワーアンプの必要とする電圧を供給するために、コントロール部分でも増幅していることが多い。例えばトーンコントロール回路が、トーンコントロール機能と電圧増幅機能を兼ねている場合が多いが、少ない部品で最大限の機能を発揮するには大変好都合で、コスト的に有利で優れた機能を持たせることが可能です。
然し、トーンコントロールを全く必要としない場合でも、電圧増幅機能は必要なため、一般のアンプではこの部分を切りはなすことはできません。
PMA-700ではこの様な複雑な方式ではなく、種々のコントロールはそれぞれのユニット回路で行ない、それらが必要ない場合は主回路から完全に切り離してしまい一切影響がない様に設計してあります。
■EQアンプの目的と性能
いうまでもなく、イコライザーアンプの目的はレコード録音時のRIAA特性を補正してその出力端では、録音再生系全体としてフラットな特性が得られる様にすると同時に一般のプリメインアンプではその出力がAUXレベルと同じになる所まで増幅します。
従ってその性能は、f特性、S/N等一般的なものはもちろんのこと、第一にRIAA特性の正確さ、第二には基準レベルまでの増幅、同時にプログラム信号のピークファクターに見合ったダイナミックレンジを持たなければなりません。
PMA-700のイコライザーアンプは
- 基準入カレペル -50dB(3.2mV)
- RIAAからの偏差 ±0.3dB
- クリッピングレベル -20dB(100mV)
- ゲイン 40dB
- 出力レベル 定格入力(-50dB)に対して -10dB
- 雑音レベル -115dB
- ダイナミックレンジ 95dB
となっています。
実際にはRIAAからの偏差を±0.3dBより充分小さく押さえられます。ゲインは一般のイコライザーアンプが34〜37dBであるのに比べて少し大きめですが、歪率、S/Nが充分とれ、尚且つRIAA偏差が正確であることは、無理にNFを沢山かけていないことを意味するもので、発振等に対して強く安定度の高い設計であることを示しています。
■プログラムのピークファクター
PHONO端子の最大許容入力について色々な説がありますが、PMA-700に於いては各種の理論や実験と、特に市販のレコードについて、そのピークレベルを測定した結果にもとずいて最大許容入力を設定しました。 レコードの基準レベルは、レコードに速度振巾50mm/secでカッティングされた信号をいい、JISで規定されています。各カードリッジの出力とはこの時の値を示します。
この基準レベルは実際のレコードの大体平均レベルに近いと考えられますが、プログラムは平均レベルよりも非常に大きな値でカッティングされています。
弊社の測定結果に基づくと、一番大きな値は+17dB(これをピークファクターという)約7倍、つまり速度振幅にして350mm/sec位となります。しかし、ピーク値の平均は11.5dBですから、種々の余裕を加えて8倍の余裕があればクリッピング歪を生じることはないといえます。
一方市販されているカートリッジの出力レベルは2〜6mVのものが多く、最大でも10〜11mV位ですから、仮に1.2mVの最大出力とすると、ピークレベル+18dBのレコードと出力12mVのカートリッジの組合せでは12×8=96mVの出力となりますが、平均的なカートリッジであれば6mVとしても6×8=48mVの出力となりますから、イコライザーアンプの最大許容入力は100mVあれば充分であるといえます。
■入力感度と定格出力
従来のアンプはカートリッジの定格出力で定格パワーが出ることになっています。カートリッジの定格出力というのは1,000Hzの音が50mm/secの速度振幅でカッティングされたレコードをトレースした時に出てくる電圧をいいます。そして、その値はレコードの平均レベルと考えてよいことは前述の通りです。
従って、もしも平均以上のカッティングレベルの音溝をトレースしたとすると、定格出力よりも大きな出力が当然発生しますので、定格パワーをオーバーして音は歪んでしまいます。
つまり、カートリッジ出力が平均よりも一寸でも大きくなれば音が歪んでしまいます。
これでは使えないので結局アンプは、ピークファクター分7ごけ(15〜17dB位)ボリウムをしぼって使用されているわけです。
これではボリウムの上の方は使えないわけで、音楽プログラムの再生では10dB以上役にたたないことになります。
そこで、PMA-700は基準レベルを、この様な一般常識よりも低くとり定格入力(-50dB)に対して出力電力が8W/8Ωとしてあります。 この設定は定格パワーの80W/8Ωよりも10dB低い値ですから、速度振幅50mm/sec以上のレベルの入力であってもクリッピング歪の心配はまったくありません。
そして、測定等のような特別な場合や従来通りのご使用条件をお望みの場合は、パワーアンプの前にブースターアンプを入れてありますので、ゲインスイッチを+10dBにすれば容易に定格入力で定格パワーの80W/8Ωが得られますから、一般の音楽プログラムに対しては極めて使い易いアンプとなっています。
- 型式
- オールシリコントランジスタステレオプリメインアンプ
- パワー・アンプ部
- 回路方式
- 定格出力
- 片CH駆動時
- 80W+80W(負荷8Ω T.H.D. 0.05%)
- 100W+100W(負荷4Ω T.H.D. 0.05%)
- 両CH駆動時
- 70W+70W(負荷8Ω T.H.D. 0.05%)
- 85W+85W(負荷4Ω T.H.D. 0.05%)
- 全調波ひずみ率
- 0.05%以下(定格出力時60Hz〜10KHzにて)
- 混変調ひずみ率
- 0.1%以下(正弦波定格出力相当振幅出力時)
- 0.05%以下(正弦波80mW相当振幅出力時)
- 出力帯域幅
- 入力感度
- 入力インピーダンス
- 残留雑音
- 出力インピーダンス
- 伝送特性
- プリアンプ部 コントロールアンプ部
- 最大出力
- 定格出力
- 雑音ひずみ率
- 入力感度/入力インピーダンス
- PHONO-1
- PHONO-2
- (MC)0.32mVrms 150Ω±10%
- (MM)3.2mVrms 30KΩ±10%
- TUNER
- AUX-1(LEVEL MAX)
- AUX-2
- TAPE-1(LEVEL MAX)
- TAPE-2
- REC/PB(入力部)
- 最大許容入力
- PHONO-1
- PHONO-2
- (MM)MINIMUM 100mVrms(1KHz)
- (MC)MINIMUM 10mVrms(1KHz)
- S/N比
- PHONO-1
- PHONO-2
- (MM)62dB以上(入力端子短絡)
- (MC)52dB以上(入力端子短絡)
- TUNER,AUX,TAPE
- イコライザ特性
- RIAA偏差±0.3dB以内(39Hz〜15KHz)
- トーンコントロール部伝送特性
- TONE DEFEAT時 10Hz〜150KHz ±0.5dB
- TONE FLAT時 20Hz〜20KHz ±0.5dB
- トーンコントロール折曲点/可変範囲
- 低域 320Hz,640Hz:50Hz,100Hz±10dB
- 高域 1.6KHz,3.2KHz:10KHz,20KHz±10dB
- フィルター特性
- 低域 40Hz 18dB/octバター・ワース型
- 高域 9KHz 18dB/octバター・ワース型
- ラウドネスコントロール特性
- 低域 100Hz +6.5dB
- 高域 10KHz +6dB
- ミューティング
- 消費電力
- 外形寸法
- 重量