主な特長
アナログオーディオ回路、デジタルオーディオ回路、アナログ電源回路、そしてデジタル電源回路に至るまで、入念に一つ一つのパーツを吟味、カットアンドトライを繰り返しながら途方もない時間をかけてDCD-SX1 LIMITEDの音は研ぎ澄まされてきました。オーディオ機器の開発期間としては異例とも言える4年に及ぶ歳月を経て、変更されたパーツは実に400点超。コンデンサー、抵抗、OPアンプなど、音質に直接的・間接的に関与する数多くのパーツが変更され、回路パターンをより洗練させるために基板自体も新設計されました。デノンが築いてきた技術的資産の集大成であるSX1シリーズを母体として、山内がエンジニアとして、そしてサウンドマスターとして培ってきた経験、技術、感性のすべてを注いで作り上げたのがこのSX1 LIMITED EDITIONシリーズです。新たな時代のデノンのサウンドフィロソフィー「Vivid & Spacious」を体現し、これからのデノンの進むべき道を指し示すフラッグシップモデルがここに誕生しました。
SX1 LIMITED EDITIONシリーズの開発においては山内がサウンドマスターに就任する前のエンジニア時代から作り上げてきた数々のカスタムコンデンサーを惜しみなく投入しました。NEシリーズの開発過程で開発されたものや、今回のSX1 LIMITED EDITIONのために開発されたものも含め、その数は37種にも及びます。用いる素材の指定はもちろん、スリーブの素材や有無、加熱行程における温度指定、プレス工程の圧力の調整など、様々な経験とノウハウ、そしてその差を聴き分ける感性によって作られた多くのカスタムコンデンサーを巧みに使い分けることによってSX1 LIMITED EDITIONシリーズのサウンドを磨き上げています。
トップカバーとフットの素材には新たにA7075(超々ジュラルミン)を採用。SX1 LIMITED EDITIONシリーズの開発にあたり、様々な材質を用いて試作・試聴を繰り返し、パーツ単体としての性能だけではなくSX1 LIMITED EDITIONシリーズとのマッチングを慎重に吟味し、A7075を選び抜きました。A7075はアルミに亜鉛(Zn)とマグネシウム(Mg)が添加された合金であり、アルミ合金の中では最も強度に優れ、航空機や車両の部品などに用いられている素材です。当初デザイン上の観点からトップカバーはサンドブラスト加工を予定していましたが、ヘアライン加工されたトップカバーをテストしたところ、サウンドステージの透明感やディテールの表現力により優れていたため最終的にヘアライン加工のトップカバーを採用しました。
Advanced S.V.H. Mechanismは、アルミ砂型鋳物ベースやハイブリッド・メカリッド、アルミダイキャスト・トレイなど、メカニズムの各パーツをそれぞれの目的に沿った異なる素材で構成。その結果、重量増による制振性の向上や共振点の分散化など、高いレベルの制振性を実現。また、メカを低重心化することでディスクの回転により機器内部から生じる振動を低減することはもちろん、外部からの振動にも強い構造を実現しています。さらに、スピンドルシャフトを短くすることによりディスクの回転ブレを抑え、正確なデータの読み取りを実現。これにより、ピックアップを制御するサーボの負担やエラー訂正などのデジタル回路への負荷を軽減しています。
デジタル回路が進歩し音の再現力が上がるほどに、機械としての繊細さは増し、振動に対して敏感になります。DCD-SX1 LIMITEDでは、ドライブ・メカニズムを支えるアルミ砂型鋳物ベースなど、入念な振動対策を行うことにより、ディテールの表現力や音場の安定感を高めています。このアルミ砂型鋳物ベースは、その大質量と優れた内部損失により、振動による音質への影響を徹底的に排除します。
最終的な音質は、ドライブ・メカニズムを構成する素材やハウジングの形状からも影響を受けます。フラッグシップモデルにふさわしい音質を求め、試行錯誤を重ねた結果、アルミブロックとステンレス・クランパーで銅メッキスチールプレートをサンドイッチしたハイブリッド・メカリッドを採用。メカニズムの剛性向上と制振効果によって音質向上に大きく貢献しています。
いかにオリジナルのアナログ音源に近い音を再現するか。これはデノンが長きにわたり、デジタル再生においてもっとも強くこだわってきたテーマであり、それを形にしたのがビット拡張&データ補完によるアナログ波形再現技術「ALPHA Processing」です。DCD-SX1 LIMITEDには、その最新バージョンである「Advanced AL32 Processing」を搭載。CD再生の場合、44.1 kHz / 16 bitのデータを705.6 kHz / 32 bitへとアップサンプリング&ビット拡張処理を行います。進化した独自のアルゴリズムによって前後のデータの離散値からあるべき点を導き出し、本来のアナログ波形を再現する理想的な補間処理を行います。デジタル録音時に失われたデータを高い精度で復元することで、歪みのない繊細な描写、正確な音の定位、豊かな低域など原音に忠実な再生を実現しています。
Advanced AL32 Processingの効果を最大限に引き出すため、もう一つのデノンのオリジナル技術であるDAC Master Clock Designをさらに進化させました。D/Aコンバーターに供給するクロックの精度を最優先するために、D/Aコンバーターのすぐ側にクロックモジュールを配置。DACをマスター、周辺回路をスレーブとしてクロック供給を行うことでD/A変換の精度を高めています。また、44.1kHz系と48kHz系の2系統のクロックモジュールを搭載し、CDやSACD、PC、USBメモリーから入力される多様な信号のサンプリングレートに合わせて最適なクロックを使用することにより、ジッターの原因となるクロック分周時の誤差を排除しています。そしてDCD-SX1 LIMITEDではさらなるジッター低減のために最新の超低位相ノイズの水晶発振器を新たに採用。10 dBの位相ノイズ低減を実現しました。
L/Rチャンネルそれぞれに専用のD/Aコンバーターを搭載し、HOT、COLDそれぞれを差動出力するモノモードで使用しています。D/Aコンバーターの電流出力を受けるI/V(電流/電圧)変換回路とポストフィルター回路にはフルバランス構成を採用。チャンネルセパレーションに優れ、歪みやS/Nなどの特性においても理想的な回路構成といえます。また、アンバランス出力回路についても、D/Aコンバーターの差動出力を合成して出力する差動ドライブ構成としています。バランス出力の位相はリアパネルのスイッチで切り替えることができます。DCD-SX1 LIMITEDではオーディオ出力回路におけるコンデンサーと抵抗の約90%を変更するとともにOPアンプを高品位化。さらにローパスフィルターの定数変更も行い、より広い空間と生々しい音像の表現力に磨きをかけました。
微妙なニュアンスの表現を求められるこのクラスのプレーヤーでは回路パターンの設計も重要なファクターとなってきます。DCD-SX1 LIMITEDでは、信号ラインが最短になるように基板設計を行い、信号伝送時のロスを最小化。さらに外部からの影響による音質劣化も防いでいます。
L.C.(Leakage Cancelling)マウント・ツイントランスはデノンが誇る高音質設計手法のひとつです。磁界が逆向きになるように2つのトランスを取り付けることで、互いの漏洩磁束がキャンセルされる効果的な配置になっています。DCD-SX1 LIMITEDでは、2つのトランスをデジタル回路用とアナログ回路用に使い分けることで、相互干渉や電源ラインを介したノイズの回り込みを排除しています。取り付け台座には、ドライブ・メカと同様にアルミ砂型鋳物ベースを使用。高い内部損失により、振動を素早く減衰させ、周辺回路への伝搬を防止します。
ディスクの回転や電源トランスにより発生する内部の振動や、スピーカーの音圧による空気振動がもたらす音楽信号の劣化。これらを効果的に防ぎ、繊細な音楽信号を守るにはどうしたら良いか、このテーマに対して、DP-S1そしてPOA-S1の開発以降、デノンがこだわり続けてきた振動抑止構造が「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」です。自らが振動体でもある電源トランスをフットの間近に配置することで、振動を直接グラウンドへと逃がし、周辺回路への不要な振動の伝搬を防止しています。また、もっとも大きな質量を持つパーツであるドライブ・メカニズムをシャーシ中央の低い位置に配置することで低重心化を図り、ディスクの回転による内部的な振動や外部から受ける振動にも強い構造を実現。さらに、ボトムには3枚のスチールプレートを追加することで、圧倒的なシャーシ剛性と十分な質量を持たせ、外部からの振動エネルギーを遮断しています。
USB-DAC機能は、DSD 2.8 MHz / 5.6 MHzの入力に対応。伝送方式はASIOドライバーによるネイティブ再生とDoP (DSD over PCM Frames)に対応しています。PCM入力は最大192 kHz / 24 bitまで対応。PCM信号を入力した際には、CDの音声と同様にAdvanced AL32 Processingにより、ハイビット&ハイサンプリング化されます。また、PC側のジッターを多く含んだクロックを使用せず、DCD-SX1 LIMITEDの高精度なマスタークロックで制御を行うアシンクロナス転送にも対応しています。
USB-B入力に接続されたPCから流入する高周波ノイズによる音質への悪影響を排除するために、高速デジタルアイソレーターを搭載。ICチップ上に組み込まれたトランス・コイルを介して磁気により音楽データのみを伝送し、繊細なオーディオ信号に影響を与えるノイズはシャットアウトします。また、グラウンドもリレーを用いてPCとの電気的な結合を完全に遮断しています。さらに、周辺回路への高周波ノイズの輻射を抑えるために、デジタル回路全体を銅メッキスチールプレートによるシールドケースに封入しています。
USBメモリーやiPod / iPhoneを接続して音楽を楽しめるUSB-A入力をリアパネルに装備。USBメモリーからの再生では、48 kHzまでのMP3 / WMA / AAC / WAVファイルの再生が可能です。iPod / iPhoneの充電も可能なため、バッテリーの残量を気にすることなく音楽再生を楽しめます。
オーディオ特性
スーパーオーディオCD | PCM | |
チャンネル | 2チャンネル | 2チャンネル |
再生周波数範囲 | 2 Hz ~ 100 kHz | 2 Hz ~ 20 kHz |
再生周波数特性 | 2 Hz ~ 50 kHz(-3 dB) | 2 Hz ~ 20 kHz(±0.5 dB) |
S/N比 | 122 dB(可聴帯域) | 122 dB |
ダイナミックレンジ | 118 dB(可聴帯域) | 101 dB |
高調波歪率 | 0.0005 %(1 kHz、可聴帯域) | 0.0015 %(1 kHz) |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 | 測定限界以下 |
出力レベル | 2.0 V(10 kΩ) | 2.0 V(10 kΩ) |
入出力端子
アナログ音声出力端子 | バランス出力×1、アンバランス出力×1 |
デジタル音声出力端子 | 同軸デジタル出力×1、光デジタル出力×1 |
デジタル音声入力端子 | USB-B×1(PC)、USB-A×1(iPod / iPhone、USBメモリー)、同軸デジタル出力×1、光デジタル出力×1 |
その他 | リモートコントロール入出力×1 |
総合
外形寸法(W × H × D) | 434 x 149 x 406 mm |
質量 | 23.5 kg |
消費電力 | 39 W |
待機電力 | 0.1 W(オートスタンバイオン) 0.3 W(オートスタンバイオフ) |
付属品 | 取扱説明書、リモコン、単4形乾電池×2、オーディオケーブル、電源コード |
発売日:2019年9月中旬